ワインの歴史が詰まった町、ウティエルとレケーナ(歴史II)


地中海沿岸の大都市バレンシアから内陸に入ること約70km。地場品種ボバルの赤ワインの産地、DOウティエル・レケーナがあります。その中心都市ウティエルとレケーナはそれぞれ人口1万人、2万人ほどという小さな町ですが、驚くべきワイン文化の遺産があります。それが地下のボデガ、かつてワインを保存していたスペースです。

住居の下に掘られた巨大な洞穴に、ティナハと呼ばれる巨大な素焼きの壺がいくつも並ぶ様は圧巻です。ティナハは18世紀初めごろから19世紀末ごろまでに作られたものです。地上階でブドウ踏みをし、最初の活発な発酵が終わったところでマストを地下のティナハに流し込みます。そのときに使うダクトもボデガに残っています。マストはここで発酵を終え、できたワインはティナハで保存され、下部に付けられた栓から出して使われていました。

 

 

このスペースは各家がワインだけでなく、オリーブオイルや穀物などを保存する場所としても使っていたそうです。

ウティエルでもレケーナでも旧市街の中心部に見学できる地下のボデガがあります。また地下のボデガをバルとして使っているレストランもあるので、ティナハに囲まれてワインを飲むこともできます。

 

 

19世紀後半、フランスをはじめヨーロッパのワイン産地はオイディウムとミルデュウ、続いてフィロキセラに襲われ、ブドウ畑は壊滅状態に陥りました。その時まだ無傷だったこの地域は、空前のワイン生産ブームに沸きました。

 

 

さらに1887年、ウティエルにはワインを船に積み込む港があるバレンシアと結ぶ鉄道が敷かれました。これによりワイン産業にさらに拍車がかかり、駅の近くには多くの醸造所が建てられました。現在DOウティエル・レケーナの統制委員会本部がある円形の建物もその一つです。中では、カラフルな絵が描かれた陶器の破片が一面に貼り付けられた、かつてのセメント製発酵槽が見られます。

フィロキセラがこの地にたどり着いたのは1912年のことでした。代替植物が育ちにくいこの地域では、ブドウ栽培そしてワイン生産が主要産業です。これを機にブドウ畑は大々的に植え替えられ、栽培に適した品種としてボバルが選ばれ、その栽培が集中的に進んだのでした。

 

 

スペインでワイン法ができた1932年、ウティエル・レケーナはワイン産地として認定されました。

DOウティエル・レケーナは独自のプロモーションも活発に行っています。DO ウティエル・レケーナのワインに関する最新情報は、FacebookInstagramX(旧ツイッター)をフォロー願います。