DOウティエル・レケーナの地域にブドウ栽培とワイン造りを伝えたのはフェニキア人だと言われています。紀元前7世紀には伝わっていたそうで、その裏付けとなる遺跡が各地で発見されています。
その一つがソラナ・デ・ラス・ピリーリャスです。雑木林に囲まれた渓谷の脇にあり、車の入れない細い道しかありませんが、そこには古代の文明の跡がはっきり残っています。傾斜のきつい斜面にかつての集落の石積みが並んでいます。その中心的存在が大きな岩をくりぬいて作ったラガールです。
ラガールというのはブドウ踏みをして果汁を採取する場所のことです。このラガールは巨大な一つの岩に上下二段のスペースが彫って作られています。上はブドウ踏みをするスペースです。背の部分には穴が2つ開けられています。これは踏み終わったブドウを集めて、圧力をかけてさらに搾る時にビームを挿すための穴です。上の段と下の段の境にも穴が開けられています。こちらは果汁を下の段に流すためのものです。原理は今と全く同じです。こういった構造のラガールがこの遺跡では4つ発見されています。ワイン造りが盛んだった証拠と言えるでしょう。
ここで一つ疑問が生まれます。ウティエル・レケーナは地中海から70㎞ほど内陸に入ったところにあります。海運に長けたフェニキア人たちはなぜ、こんなに海から離れたところでワイン造りを造ることを考えたのでしょう。この地域の古代遺跡を研修する考古学者のアスンシオン・マルティネスさんによると、今でこそ深い谷底に細い水路が少し見えるだけですが、かつて、この集落が栄えていた頃には、川は目の前を流れていたのだそうです。出来たワインは船に積まれて川を下り、地中海へと運ばれていたのです。
ただ、フェキア人たちがここに定住していたわけではありません。この技術を学んでワインを造っていたのは先住民のイベロ人たちです。以後、この地では面々とブドウが栽培されワインが造られてきています。
フェニキア人、イベロ人、そして後にやってきたギリシャ人やローマ人たちが作ったアンフォラもこの地域で発見されていて、レケーナのワイン考古学博物館サン・ニコラスに展示されています。